白い夜に、時間を飲む。雪の日に観たい映画 × 熟成ナチュラルワイン|第2話

第2話|『スノーケーキを君に』 × サウレタス 2014

雪は、すべてを覆い隠す。
傷も、言葉も、言い過ぎた後悔も。

『スノーケーキを君に』は、
何かを劇的に解決する映画ではない。
ただ、止まっていた時間が、
ゆっくりと動き出す瞬間を描いている。

この映画が似合う夜は、
慰めよりも沈黙がほしい日だ。


静かに並ぶことの難しさ

舞台は雪に閉ざされたカナダの町。
主人公たちは、過去に深い喪失を抱えている。

感情をぶつけ合うこともない。
分かり合えたと確信する場面もない。
それでも、同じ空間にいる時間が
少しずつ、心の温度を変えていく。

『スノーケーキを君に』が描くのは、
「分かり合う」物語ではない。
「分からないまま、隣にいる」物語だ。

雪景色が美しいのは、
そこに何も足さなくていいからだろう。


この夜に開けたいのは、冷たくない白

グラスに注ぐのは、
セバスチャン・リフォー
サンセール サウレタス 2014。

色は、白というよりも琥珀に近い黄金色。
一般的なサンセールを想像すると、
まず驚くはずだ。

香りには、ママレード、焼き菓子、蜂蜜。
だが甘やかではなく、落ち着いている。
貴腐ブドウを含むにもかかわらず、
デザートに向かう気配はない。

口に含むと、とろりとした質感。
たっぷりとした旨味と、
時間を経て溶け込んだ酸。

冷やしすぎてはいけない白ワイン。
それだけで、この夜の空気が決まる。


「太陽の下」という名前の、静かな逆説

サウレタスは、
リトアニア語で「太陽の下」という意味を持つ。

だが、このワインから連想されるのは、
まぶしい光ではない。
むしろ、冬の低い太陽が
長い影を落とす午後のようだ。

樹齢50年のソーヴィニヨン・ブラン。
貴腐ブドウと完熟ブドウを半分ずつ使い、
長い時間をかけて発酵・熟成。

SO₂無添加でありながら、
驚くほど落ち着いた佇まい。

急がず、無理をせず、
ただ待つことでしか辿り着けない味わいがある。

それは、この映画の時間の流れと
よく似ている。



雪の日は、温度を上げなくていい

暖房の効いた部屋で、
映画は途中で止めない。

ワインも同じだ。
香りが開くのを待ち、
味わいが変化するのを待つ。

一口目より、二口目。
二口目より、飲み終えたあとの余韻。

サウレタスは、
「美味しい」と言わせようとしない。
ただ、そこにある。

『スノーケーキを君に』も同じだ。
感情を動かそうとせず、
結果として、心に残る。



次の白い夜へ

雪の日は、
何かを得る夜ではない。

失ったものを、
少し違う形で抱え直す夜だ。

この連載では、
雪の日に観たい映画と、
その静けさに寄り添う
熟成ナチュラルワインを紹介していく。

刺激は少なくていい。
説明も、多くなくていい。

白い夜には、
冷たくない白を、ゆっくり飲めばいい。

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