古いシャンパンは飲める?
「何年か前にいただいたシャンパーニュがあるけど飲める?」
konishi1924 ではヴィンテージワインを販売しているので、先のような質問を受けることが少なくありません。
頂き物に気が付かなければ良いのですが、気が付いてしまうと気になるもの、今回のブログではこの辺りを解説してみたいと思います。
飲める場合が多い、ただし・・・
さて、上記のような質問を受けた時、お尋ねすることが二つあります。
・ボトルをどのような状態で置いていたのか
・いつ頃いただいたのか
質問に回答いただくとワインがどのような環境で置かれていたのか、ワインに親しみがあるのか、だいたいわかるものです。そして、いただき物のシャンパーニュの場合、多くは大手メゾンの有名銘柄です。
そこで、さくっと下記のようにご案内しています。
ー いただいて3年くらいならば・・・
よほど環境が悪い場所に置いてない限り”ふつう”に楽しめるようです。
ただ、運が悪くブショネに当たる場合もありますし、絶対に楽しめるという保証はありません。
ー いただいて5年くらい経過している場合・・・
保存状態でかなり味わいに差が出てくるようです。
日の当たる窓際に飾って置かれていた場合は、かなり厳しい状況、飲めないことはない… という味わいに変化しているかもしれません。
押し入れなどで横に寝かせて保存されていた場合は、泡立ちが少なかったり、フレッシュさは感じられませんが、”ふつう”に楽しめたりします。
シャンパーニュは、出荷された時が飲み頃といわれます。
多くの人は、” グラスに注ぐとシュワシュワと輝きながら元気に泡立つ様子、たっぷりとガスを含んだ爽やかではつらつとした味わい ” をイメージします。
ところが出荷されて時間がたつと、イメージと異なった味わいに変化していることが多く、「あれっ、違う」となる訳です。
古いシャンパーニュを楽しんで飲むポイントは「違う」を認識しておくことなのかもしれません。
どう変わるのかというと、泡立ちに勢いが衰え、味わいのフレッシュさが減少していきます。
リリースされたばかりのシャンパーニュとは、少し印象が異なるのだと意識して飲めば ”ふつう” に楽しめるはずです。
そして、ラベルにヴィンテージが記載されていない「ノン・ヴィンテージ」のシャンパーニュは、やはり早めに楽しむのがよろしいようです。
日の当たらない涼しい所に保管して頂いてから半年以内に飲んでしまいましょう。
シャンパーニュとは
ここで簡単にシャンパーニュについて記載しておきます。
シャンパーニュとは、フランスのシャンパーニュ地方で造られるスパークリングワインのことを指します。
スパークリングワインは発泡性ワインの総称で、世界のワイン産地で様々なスタイルのワインがつくられています。ただし、フランスのシャンパーニュ地方以外で造られるスパークリングワインや、他国のスパークリングワインはシャンパーニュを名乗ることはできません。
シャンパーニュは、ラベルに必ず「Champagne」と表記することが義務づけられています。
シャンパーニュ地方
シャンパーニュ地方はパリの北東130キロに位置する生産地です。ランスとエペルネという都市を抱え、ランスには歴代フランス国王の戴冠式の場所ともなった、世界遺産の美しい大聖堂があります。
北緯50度、年間平均気温10℃という冷涼な地域で、右に続く大陸からは、冷たい風が吹き降ろし、左の大西洋からは湿った温かい空気が入り込んできます。昔はドーバー海峡から続く海底が隆起して現れた土壌は、海の古代生物も堆積する真っ白な石灰質土壌。黒板に字が書けるようなまさに“チョーク”の土壌です。
冷涼な厳しい気候のシャンパーニュ地方では、安定した品質を保つため、複数のヴィンテージ、 複数の畑、3種類のぶどう品種のワインを“ブレンド”して造られるのが基本です。
シャンパーニュのエチケットに表記される地域名は「シャンパーニュ」のみで、他のワイン産地のような細かな地域の表示がありません。
シャンパーニュ地方では、ワイン生産者とぶどう栽培者は異なることが多く、 大手生産者のほとんどは、自社畑だけではなく農家からブドウを買い付けて シャンパーニュを造っています。
最近は、ラベルに小さく「RM」と表示される、ぶどう栽培とワイン醸造を兼ねた生産者も増えています。
RM(レコルタン・マニピュラン)は、栽培醸造家の総称、ぶどう栽培から醸造を自社で一貫して行います。
小規模経営の職人的な造りが特徴です。
生み出される個性的な味わいのシャンパーニュは、フランスにとどまらず世界の愛好家に人気が高く、大手メゾンのシャンパーニュとは楽しまれ方も少し異なるようです。生産量が少ないところに、愛好家がこぞって探し求めるため、入手困難な場合も多くみられます。
ノン・ヴィンテージ・シャンパーニュとヴィンテージ・シャンパーニュ
シャンパーニュは大きく分けて、年号が表示されていないシャンパーニュと、表示されているシャンパーニュに分かれます。
ノン・ヴィンテージ シャンパーニュ
年号が表示されていないシャンパーニュは、ノン・ヴィンテージ・シャンパーニュとも呼ばれ、生産者の一貫性やスタイルを体験できるのが特徴です。
メゾン(生産者)は、一貫したシャンパーニュの味わいを保つために、複数年のベースワインをブレンドしてつくります。
シャンパーニュ地方の特徴的な風味を表現しつつ、調和のとれたブレンドで「変わらない味わい」が求められ、特徴であるともいえます。
メゾンごとに味わいのスタイルは異なりますが、年号で味わいのばらつきが生じることはありません。
代表されるのは、モエ・エ・シャンドンのブリュット・アンペリアル、ヴーブ・クリコのイエローラベル、ルイロデレールのコレクションなどで、常に安定して普遍的な美味しさを楽しむことが出来ます。
ヴィンテージ・シャンパーニュ
ヴィンテージ・シャンパーニュは、ミレジムとも呼ばれ、同じ収穫年のぶどうでつくられます。
ぶどうの出来が良かった年だけに造られるもので、品質と最適な生育条件の頂点を示す、特別な年であることを表現しています。
すべての年が「ヴィンテージ」とみなされるわけではありません。
ヴィンテージとしてみなされるには、気候条件、ぶどうの品質、熟成の可能性など様々な要素に基づいた厳しい基準があり、シャンパーニュメゾンによって各々に定められています。
多くの場合、より優れた熟成の可能性を示し、時間の経過とともに熟成から生まれる香りや味わいを生み出します。10年前、20年前のヴィンテージシャンパンを、多くはありませんが市場でみつけることも可能です。
ヴィンテージ・シャンパーニュの楽しみ方
ノンヴィンテージのシャンパーニュがうっかり忘れて古くなるのに対し、ヴィンテージシャンパーニュはコレクションとして保管され時を重ねて古くなる傾向があるようです。所有している人がエイジングさせているのです。
レストランで楽しみたい
シャンパーニュはいろいろな歴史の中で、特別な日を祝うお酒として大切にされてきました。今では重要なことを成し遂げたときやお祝の席ではシャンパーニュでの乾杯がすっかり定着しています。
F1の表彰台、映画祭や賞の授賞式、楽しい、晴れやかな舞台でシャンパーニュが振る舞われています。
さて先日のこと、お客様より「2004年のシャンパーニュをレストランに持ち込んで飲みたいのですが、味わいは大丈夫でしょうか・・・」というご質問を受けました。
お客様には先にブルゴーニュワインのご注文をいただいており発送も済ませておりました。お子様が20歳になられ、レストランでお祝いをするのだそうです。
上記のブルゴーニュに追加して、所有のヴィンテージ・シャンパーニュを乾杯に楽しまれたいようですが、味わいに不安要素があるのでどうしたものか、と悩んでおられるとのことでした。
シャンパーニュは現地のメゾンで2015年に購入、その後自宅のセラーにて保管、少しの間セラーには入れてない期間もあったとのこと。
きちんと管理されてきたシャンパーニュなので問題はないだろうと想像しました。
ブルゴーニュワインはレストランへ持ち込むことを連絡していますが、所有のシャンパーニュの追加は、ワインが劣化していた場合に失礼に当たるのではないかと考え、躊躇されていたのです。
まずは、シャンパーニュの味わいについて説明させていただきました。
「ワインは開けてみないと分からない点も多く、飲み頃は人それぞれなのでなんとも言えないのですが、古酒の領域に入った味わいにはなっているはずです。熟成により少しカラメルのような香りが出ていて、果実と酸味がひとつにまとまって落ち着きのある美味しさです。泡立ちも少なくなっていると思われます。
一般的に「乾杯」にはノンヴィンテージのワインが使われることが多いです。ノンヴィンテージのシャンパーニュは出荷された時が飲み頃とされます。乾杯する時にイメージするシャンパーニュは、元気に泡だつ、はつらつとした味わいのシャンパーニュです。
このイメージのシャンパーニュを想像していると、あれ違う、となります。ですが、あらかじめ熟成した味わいのシャンパーニュと認識していると、「あれ」っとはならないはず。
20年の時がたって泡が少なくなり、味わいも落ち着いていることを前提に乾杯されるのならば充分に楽しめると思います。20年の時の流れはご両親様にとって感慨深い大切な時間です、ぜひ、存分に楽しんでいただきたいと願います。」という内容の説明をさせていただきました。
レストランで楽しむご提案
今回はレストランでの乾杯なので、食事の邪魔になってもいけないと懸念されておられました。
長い間、熟成させてきたワイン、ぜひとも美味しいお食事と楽しみたいものです。そこで下記のようにご提案させていただきました。
「レストラン側は、私の友人のソムリエさんも皆そうなのですが、皆さん、お客様に楽しんでいただきたい、楽しめるおもてなしをと思われているようです。
2004年のシャンパーニュを楽しみたいと思う気持ちも汲み取ってくれるのではないでしょうか。
もしも、味わってみてシャンパーニュの味わいが食事の邪魔をするような状態ならば、劣化していると感じたら、違うワインを注文すれば良いわけです。
当日は、ワインを持参されるかと思います。
シャンパーニュは氷の入ったワインクーラーで冷やしても少し時間が必要です。
そこで提案なのですが、食事のスタートをスマートに始める意味も込めて、グラスのスパークリングワインやシャンパーニュで先にアペリティフを兼ねてさらりと乾杯。
良い感じに冷えたのを見計らって改めて本格的に2004年のシャンパーニュで乾杯、時間の流れと落ち着いた味わいをお料理と共に存分に楽しまれてはいかがでしょうか。お酒に弱い方ですと難しい提案ですが、ご検討下さいませ。」
上記のようにご提案させていただきました。
レストランで注文する場合は必要のない配慮ですが、持ち込みをする場合はお店に対しての配慮も良いサービスをしていただく上で重要なことかと思います。
自宅や持ち寄りワイン会で楽しむ場合
自宅でのワインパーティーやお呼ばれ、持ち寄りのワイン会などでの楽しみ方はどうでしょう。
ヴィンテージ・シャンパーニュは先にも書きましたが、熟成させることも前提にしてつくられています。それでも、時間が経てば泡立ちは少なくなるもの。
独自にエイジングさせた場合は、勢いの良い泡を期待しない前提で楽しみましょう。10年、20年の時間を経たワインに「泡立ちが悪いね」などの言葉は禁物です。
熟成による風味も感じられるはず、複雑に変化した味わいを楽しみましょう。お料理にもこれらの要素を入れるとお互いの風味を高めあって美味しくなります。
以外に感じられるかもしれませんが、中華料理との相性はかなりのものです。
チーズは熟成したものを選びたいところ、お互いの熟成の風味を合わせることで豊な世界が広がります。
最後に
古いワインを楽しむならば、時間の流れも感じていただきたいと思います。
「このワインがつくられた年は〇〇〇だったね」など思い出話は、シャンパーニュの複雑な味わい、美味しさを引き立ててくれる、なによりの要素になるはずです。