ロワール地方について

ロワール地方はフランス北西部に位置し、最大の大河であるロワール川によって形成された渓谷沿いに、約800㎞以上にわたって広がるワイン産地です。ぶどう栽培面積は広大でフランス国内第3位となります。

歴史的重要都市やシノン城をはじめとした100を超える古城が点在することから「フランスの庭」と呼ばれ、風光明媚な観光名所として親しまれています。その歴史と美しい景観から、2000年にはユネスコの世界遺産にも認定されました。

フランス国内においてシャンパーニュに次ぐ冷涼な気候で、東西に長いことから気候、地理・地質的にも多様性に富んでおり、爽やかな白ワインから芳醇な赤ワイン、スパークリングワインや甘口ワインまで、バラエティ豊かなワインを生み出す銘醸地です。



シュナン・ブランについて

シュナン・ブラン(Chenin blanc)は、フランスのロワール地方原産の品種でピノー・ド・ラ・ロワール(Pineau de la Loire)とも呼ばれる白ぶどう品種です。

現在は、ロワール地方や南アフリカを中心に、アメリカやニュージーランドなど世界各地で栽培されています。

南アフリカでの栽培面積は広くロワール地方の2倍もあります。面積の伴い生産量も多く、世界の約3分の2の生産量を占めると言われており、南アフリカの白ワインの主要品種となっています。

ロワールでは辛口の白ワインの他に、スパークリングワインや甘口ワインなど様々なタイプのワインが造られています。


シュナン・ブランからつくられるワインの特徴


シュナン・ブランからつくられるワインは、生産される土地の個性やヴィンテージの影響を受けやすく、生産者の醸造手法などを反映しやすいといわれます。

ピノ・ド・ラ・ロワールとも呼ばれるシュナン・ブランは、強い酸や溢れるミネラル感が特徴で、これはオーガニック栽培との相性が良く、ロワールではこの品種を使い、優れたオーガニックワインやナチュラルワインを生み出しています。1980年代初頭、フランスで初めてビオディナミを導入したのはロワールの生産者とも言われます。


シュナン・ブランは土地の個性を反映しやすく、おもに砂質の土壌では軽い口当たりのワインを産出し、シリカの多い土壌ではミネラル感が豊富に、石灰質の土壌ではシャープな酸を感じるワインになります。

ヴィンテージの面からみると、日照時間が少なかった収穫年では、酸味の強いドライなワインが造られ、未熟なブドウはスパークリングワインの原料に回されるようです。
一方、日照時間が長くブドウがしっかりと完熟した作柄の良いヴィンテージでは、生き生きとした酸とともに凝縮した蜂蜜の香味を有したワインがつくられます。

また作柄の良い年には収穫を遅らせて、遅摘みや貴腐ワインなどの甘口ワインがつくられます。黄金色の色合いやカリンや桃のような香りが特徴で、数十年以上も熟成させることができる素晴らしいワインとなります。




ロワール地方に於ける「シュナン・ブラン」の生産地

ロワール地方のワイン産地は、おおまかに5つのブロックに分けられます。

・「ペイ・ナンテ地区」ー 大西洋沿岸の川の河口付近に広がる生産地(地図 水色系部分)

・「アンジュ―&ソーミュール地区」ー ロワール渓谷沿いに広がる生産地(地図 ピンク色系部分)

・「トゥーレ―ヌ地区」ー(地図 黄色系部分)ー ロワール川の河口から80kmの内陸にある広大な生産地

・「サントル・ニヴェルネ地区」ー フランスの中心部に位置する生産地(地図 緑色系部分)

「中央高地地区」― ロワール川上流域、中央高地広がる生産地(地図 灰色系部分)

ペイ・ナンテ地区はミュスカデが、サントル・ニヴェルネ地区はプイィ・フュメやサンセールが有名です。「中央高地地区」はオーヴェルニュ地方とも呼ばれます。

今回は、シュナン・ブランを取り上げています、このぶどうでつくられるワインが有名な生産地「アンジュ―&ソーミュール地区」と「トゥーレ―ヌ地区」に注目して解説していきます。

アンジュー&ソーミュール地区

アンジュー地区は、ロワール川の河口から内陸にあるメーヌ・エ・ロワール件の県庁所在地アンジュ市と、さらに上流へ40kmほど進んだソーミュールしの周囲に広がるワイン産地です。

この地区には16ほどのA.O.C.が存在しますが、ここではシュナンブランからつくられる、主だった白ワインの生産地を取り上げてみます。

次のような生産地(A.O.C.)があります。

・アンジュ Anjou

白、赤、ロゼ、スパークリング白/ロゼ、などの多様なワインがつくられる生産地です。
シュナン・ブランからつくられる白ワインは辛口から甘口まで、単一ぶどうでつくられることが多いのですが、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランを20%までブレンドすることが認められています。
白の発泡ワインは少し異なり、シュナン・ブランを70%以上、シャルドネをブレンドする場合の比率は全体の10%以下などの細かいルールが決められています。


・コート・ド・ローバンス Coteaux de l’Aubance

シュナン・ブラン100%から甘口のワインがつくられています。
ロワール川の支流であるオーバンス川によって朝霧が発生し、9月~10月、時としてぶどうに貴腐が生じます。


・アンジュ―・コトー・ドラ・ロワール Anjou Coteaux de la Loire

シュナン・ブランのみを用いて甘口のワインがつくられる、アンジュ市の南西に位置する生産地です。

果汁の糖度が238g/ℓ未満だとこの生産地名を名乗ることは出来ません、市場であまり見かけないA.O.C.なのは、年間の生産量が670hℓと少ないからのようです。


・サヴ二エール Savenniѐres

アンジェ市の南西に位置する、ロワール川右岸の3つの村(サブニエール,ブシュメーヌ,ラ・ポソニエール)から成る生産地です。

シュナン・ブランのみを用いて辛口から甘口の白ワインがつくられています。辛口スタイルが主流となって流通しています。


-サヴニエール・ロッシュ・オー・モワンヌ Savenniѐres-Roche aux Moines

サヴニエール村のロッシュ・オー・モワンヌンという単一区画にのみ認められた生産地です。

シュナン・ブラン100%からつくられる、辛口や甘口の白ワインがつくられています。小さな生産地域のため、生産量も準じて少なくなります。


-クレー・ド・セラン Coulée de Serrant

アンジェ市の南西12km、サヴニエール村のクーレ・ド・セランという単一区画にのみ認められた生産地です。

シュナン・ブラン100%から辛口の白ワインがつくられており、現在は、ニコラ・ジョリーの単独所有となっています。


・コトー・デュ・レイヨン Coteaux de Layon

シュナン・ブラン100%から、甘口のワインがつくられています。


ロワール川の左に位置するメーヌ・エ・ロワール件の27ヶ村に認められた生産地です。支流であるロワール川の支流レイヨン川によって朝霧が発生し、時としてぶどうに貴腐が生じます。

-カール・ド・ショーム Quarts de Chaume

コトー・デュ・レイヨンに属するロシェフォール・シュール・ロワール村の中の小さなエリア「ショーム」で、シュナン・ブラン100%から、遅摘みワインや貴腐ワインなどがつくられています。かつてこの土地の領民は年間ワイン生産量の4分の1を徴収されていたそう、この歴史から4分の1を意味するカールの名が付けられたといわれます。

豊満な味わいのワインを生み出す卓越したエリアと認められており、「グラン・クリュ」と記載することが認められています。

レイヨン川を真南に望む斜面の畑は北風を受けない温暖な気候、ぶどうが過熟しやすく貴腐も生じやすいエリアです。この生産地名を表記するには、果汁の糖度が298g/ℓ 以上と決められています。

この土地で造られる甘口白ワインは、味が強い品種と言われるシュナン・ブランの持ち味を梨やハチミツの豊かな香りに仕上げており、10年から20年の長期熟成タイプである。

-ボンヌ・ゾー Bonnezeaux

コトー・デュ・レイヨンに属するトゥルアルセ村の中の小さなエリア、ボンヌゾー周辺でシュナン・ブラン100%からつくられる甘口のワインの生産地です。

果汁の糖度が255g/ℓ 以上と決められており、上記の、カール・ド・ショーム同様に、遅摘みワインや貴腐ワインがつくられています。

・ソーミュール Saumur

ソーミュール市を含む、その南側に広がる生産地で、白、赤、ロゼ、スパークリング白/ロゼ、などの多様なワインがつくられています。


シュナン・ブラン100%でつくられる白ワイン、スパークリングワインもシュナン・ブランが主体となります。

・コトー・ド・ソーミュール Coteaux de Saumur

上記のソーミュールから6つの村を除いた地域で、甘口の白ワインがつくられます。

生産地の広さはありますが、生産量が少ないエリアです。


トゥレーヌ地区

ソーミュールの東から中心都市のトゥールを経て、東はオルレアンに至る地域で、アンボワーズ城やシュノンソー城をはじめとする有名な古城が点在しています。

カベルネ・フランからつくられるシノンやブルグイユなどの赤ワイン、シュナン・ブランからつくられる白やスパークリングワインのヴーヴレ―が有名です。

この地区には15ほどのA.O.C.が存在しますが、ここでは「シュナンブラン」からつくられる、白ワインやスパークリングワインの主だった生産地を取り上げてみます。

次のような生産地(A.O.C.)があります。

・シノン Chinon

赤ワインで有名な産地ですが、シュナン・ブランから辛口の白ワインもつくられています。生産量はとても少なく全体の4%ほど。

・ヴーヴレ Vouvray

トゥール市の東に位置し、ロワール川右岸のヴーヴレを中心に広がる生産地です。シュナン・ブランから、またはシュナン・ブラン主体の白ワイン、ペティアン(微発砲性のワイン)、ムスー(スパークリングワイン)がつくられています。

・モンルイ Montlouis sur Loire 

ロワール川を挟んでヴーヴレの対岸に広がる生産地です。シュナン・ブラン100%で辛口から甘口、ペティアン(微発砲性のワイン)、ムスー(スパークリングワイン)がつくられています。

・コト-・デュ・ロワール Coteaux du Loir 

白、赤、ロゼワインがつくられる生産地で、白ワインはシュナン・ブランからつくられます。どちらかというと生産量の少ない地域です。


お料理と楽しむ!

ロワール渓谷は、地元産の新鮮な食材を使った郷土料理でも知られています。
ロワール川の魚、隣接する農場のチーズ、リエットや焼きソーセージといった肉料理など多様です。

土地のお料理とワインを合わせるのはテッパンですが、ここは日本ということで、アレンジを加えたり、想像をふくらませて楽しんでみましょう。

・マトロット・ダンギーユ Matelote d’Anguille

筒切りにしたウナギを玉ねぎやセロリなどの野菜と赤ワインで煮込んだ郷土料理です。シノンなどのカベルネ・フランシノンでつくられる赤ワインなどと合わせます。

ここでご提案、日本の鰻はとても繊細、ぶつ切りなんていたしません。少し飛躍しますが「鰻の白焼き」と楽しんでみるのはいかがでしょうか。鰻の白焼きにほんの少しだけ、オリーブオイルとワインビネガーを付けていただくのです、シュナン・ブランが持つ酸味が相乗効果を生み出し、果実味が生き生きと感じられてボン・マリアージュ!


・アスペルジュ・ソース・ムスリーヌ Asperges Sauce Mousseline

茹でたアスパラガスにソース・ムスリーヌを添えたお料理です。ソース・ムスリーヌは、オランデーズソース(※)に泡立てた卵白か生クリームを合わせて仕上げたもの。

(※)オランデーズソース 
バターとレモン果汁を卵黄を使用して乳化し、塩と少量の黒コショウまたはカイエンペッパーで風味付けしたものです。

ロワール地方や旬の時期はホワイトアスパラガスで作りますが、グリーンアスパラガスを用いても美味しくいただけますよ。

シュナン・ブランでも、少し甘さのあるタイプから辛口、スパークリングワインなどに合わせられる万能なお料理です。


・リエット・ド・トゥール Rillettes de Tours

豚肉を豚の脂でじっくり煮て、細かくほぐした料理になります。調理には白ワインも加えます。

みんな大好きリエット! 調理に使う白ワインをシュナン・ブランにすれば完璧なマリアージュとなるはず、白ワインはもちろん、スパークリングワインでも、お料理名にあるように地元ではトゥーレーヌワインを合わせます、赤ワインを合わせても楽しめます。


・サントモール・ド・トゥーレーヌ Sainte-Maure de Touraine

ロワールのトゥーレーヌやサントル圏ほかで、山羊乳からつくられるバトン型のシェーヴルチーズです。中心部に通った藁、周りにまぶされた黒い灰、個性的な姿が印象的。藁は型崩れを防ぐとともに、チーズの呼吸を助ける役割を果します。


若いときは穏やかで食べやすく、熟成するにつれて外皮はいろいろな色のカビをまとい、中身は引き締まりコクが増してきます。若いワインに若いシェーブル、熟成を経たワインには熟成して旨味を増したチーズを合わせみるのはいかでしょうか。



・タルト・タタン Tarte Tatin

タルト型に砂糖、リンゴ、バターを入れて、パイ生地を被せて焼いたリンゴのタルトです。

タルト・タタンが最初に作られたのは、19世紀後半のラモット=ボーヴロン( 現在のロワール=エ=シェール県にある町)のホテル『タタン』においてであったとか。

シュナン・ブランからつくられた貴腐ワインとの相性は抜群です。


ロワールのシュナン・ブランを味わってみよう!

辛口から甘口、若いワインから長期の熟成を経たワインまでご紹介させていただきます。

クレモン・バロー サヴ二エール ル・コトー・ド・レール  2020

750ml 税込 5,280円

ナチュラルで綺麗なつくりのサヴ二エールで辛口スタイル。イエローが強いグリーンイエロー、瀬戸内レモンやカリン、摘みたてアプリコットにスモーキーな香り、しっかりと甘味が拡がる丸みあるたっぷりのエキスと、酸が溶け込んだジューシーな味わいで、火打石のようなスモーキーな香りが後味に残ります。




シャトー・ゴードレル ヴーヴレ ”クロ・ド・ラ・ユップ 2021

750ml 税込 9,350円
ナチュラルで綺麗なつくりのヴーヴレで辛口スタイル。クロ・ド・ラ・ユップは、このシャトーの中でもっとも良い畑で、ここだけは馬耕作でぶどうを育てています。

黄色い果実やナッツを思わせる華やかで心地よい香り、豊かで広がりのある果実味、たっぷりの果実味に対してバランスのよい綺麗な酸味も印象的です。飲みごたえと力強さ、ボリューム感がありながらエレガントさが感じられるのは見事、素晴らしい味わいの白ワインです。



ドメーヌ・パトリック・ボードアン コトー・デュ・レイヨン 2001
500ml 税込 7,700円

はちみつのような黄金に輝く色合いと風味、花梨のジャム、金木犀、アカシアの花を思わせる香り。気品のある甘みが広がり、その美味しさはゆっくりと全身に染みわたっていくようです。

ジョー・ピトン コトー・デュ・レイヨン 1998

750ml 税込 6,000円

遅摘みや貴腐ぶどうをブレンド、充実した甘さのデザートワインです。

円熟した深みのある美味しさで、気品ある優雅な甘味と上質な酸が心地よく広がります。

タルト・タタンや熟成を経たサントモ―ル・ド・トゥーレ―ぬなどのシェーブルとお楽しみください。



ジョー・ピトン カール・ド・ショーム 1999
750ml 税込 15,000円

アプリコット・ジャムや蜂蜜の複雑で芳醇な味わいが楽しめる貴腐ワインです。
なんとも高貴な味わいのデザートワイン、ワインそのものが充分なデザートとしてお楽しみいただけることでしょう、ワイン会などにトリのワインとしても喜んでいただけるはずです。




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