古いワインを飲んでみたいけれど…

「古いワインを飲んでみたいけれど、少し怖い」

ヴィンテージワインを販売していると、そんな気持ちを持つ方が意外に多いように感じます。

高そう。

失敗したらどうしよう。

開け方が難しそう。

美味しくなかったら困る。

そもそも、自分に古いワインの味が分かるのだろうか。

けれど、ヴィンテージワインは特別な知識を持った人だけの飲み物ではありません。

初めてなら、初めてなりの楽しみ方があります。

今回は、これからヴィンテージワインを飲んでみたい方へ。

古いワインを選ぶところから、開け方、飲み方まで、できるだけ分かりやすくお話ししてみたいと思います。


なぜヴィンテージワインは「怖い」と感じるのか

まず、読者の不安をこちらから言葉にします。

古いワインには、少し特別な雰囲気があります。

年号の入った古いラベル。

高い価格。

ワイン通の人が難しい言葉で語る世界。

そんな印象から、

「自分にはまだ早い」

と思ってしまう方もいるかもしれません。

また、若いワインとは違い、

「開けてみるまで状態が分からないのでは?」

という不安もあります。

確かに、ヴィンテージワインには若いワインとは異なる注意点があります。

けれど、必要以上に難しく考えることはありません。

大切なのは、

古いワインは、若いワインとは少し違う飲み物だと知っておくこと。

まずはそこからで十分です。


初めての古酒、何年くらいのワインを選べばいい?

初めてヴィンテージワインを飲むからといって、50年前、60年前のワインを選ぶ必要はありません。

私は、初めての方であれば、

10年から20年ほど熟成したワイン

から試してみるのも良いと思います。

例えば2026年現在であれば、2005年から2015年頃のワイン。

まだ果実の印象を残しながら、熟成による変化も感じられるワインがあります。

若いワインとの違いも比較的分かりやすく、

「熟成するとワインはこう変わるのか」

と感じやすいでしょう。

いきなり極端に古いワインを選ぶより、

若さと熟成の間にいるワイン

から始める。

これも、ヴィンテージワインを楽しむひとつの方法です。


私自身も、「古酒を飲んでみたい」と思っていました

私もワインを始めたばかりの頃は、

「熟成したワインを飲んでみたい」

という憧れを持っていました。

けれど実際には、

熟成すると、ワインはどんな味になるのだろう。

そのイメージが湧かず、興味はあっても一歩踏み出せずにいました。

そんな頃、ワインの先輩からこんな言葉を教えていただきました。

「格付けクラスのボルドーワインなら、10年くらいで最初の飲み頃を迎えることが多いよ。」

今から30年ほど前のことです。

当時は、格付けシャトーのワインも現在ほど高価ではありませんでした。

実際に10年ほど熟成したボルドーを飲んでみると、若いワインとはまったく違う世界が広がっていました。

タンニンはやわらかくなり、香りは複雑さを増し、「熟成とはこういうことか」と実感できたのを今でも覚えています。


一方で、ブルゴーニュは少し違いました

その後、ワインに造詣の深い方が主催するワイン会に参加した時のことです。

グラスに注がれたのは、ピュリニー・モンラッシェの一級畑、しかも誰もが知る名門生産者のワインでした。

期待してグラスを傾けましたが、香りはほとんど開かず、グラスを回しても果実の香りがわずかに感じられる程度でした。

味わいも果実味と酸味がまだ一つになっておらず、生産者らしい個性も感じられません。

いわゆる**「閉じている」**状態だったのです。

主催者の方も、

「今日は少し閉じていますね。」

と、残念そうに話されていました。

この経験から、私は同じ熟成したワインでも、産地やスタイルによって飲み頃を見極める難しさが大きく違うことを学びました。

特にブルゴーニュの上級ワインは、経験や知識だけでなく、タイミングを待つ根気も必要です。


初めての一本なら、「ちょうど良い熟成」を

だからこそ、初めてヴィンテージワインを楽しむなら、いきなり何十年も熟成した名門ワインを選ぶ必要はありません。

まずは10〜20年ほど熟成し、今ちょうど飲み頃を迎えているワインから始めることをおすすめしています。

若いワインとの違いを自然に感じられ、

「熟成すると、こんな表情になるのか。」

そんな発見を、無理なく楽しめるはずです。


最初の一本は、有名なワインでなくてもいい

「ヴィンテージワインを飲むなら、ボルドーの格付けシャトーやブルゴーニュの有名生産者を選ばなければ」

と思う必要はありません。

大切なのは、

価格や知名度ではなく、今、美味しく楽しめること。

例えば、

熟成したカリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨン。

少し時間を経たドイツのピノ・ノワール。

熟成したリースリング。

甘口ワイン。

世界には、長い時間を経て美しく変化するワインがたくさんあります。

初めてのヴィンテージワインなら、

「有名な一本」よりも、

自分が普段好きなワインの延長線上から選ぶ

のも良い方法です。

普段カベルネ・ソーヴィニヨンを飲む方なら、熟成したカベルネ。

ピノ・ノワールが好きなら、少し時間を経たピノ・ノワール。

甘いものが好きなら、熟成した甘口ワイン。

初めてだからこそ、

知っている味の少し先へ。


古いワインは、どんな味がするの?

ヴィンテージワインを初めて飲む方が一番気になるのは、やはり味ではないでしょうか。

若い赤ワインには、

チェリーやカシス、ブラックベリーなど、鮮やかな果実の香りがあります。

熟成すると、その香りは少しずつ変化します。

ドライフルーツ。
紅茶。
キノコ。
森の落ち葉。
革。
スパイス。

時には醤油や出汁を思わせる香りを感じることもあります。

果実味も、若い頃の瑞々しさから、少し落ち着いた印象へ変わります。

ここで大切なのは、

若いワインと同じ美味しさを期待しないこと。

ヴィンテージワインは、

「果実がいっぱいで美味しい」

という分かりやすさとは違う魅力を持っています。

香りを嗅ぎ、

一口飲み、

少し時間を置く。

グラスの中で変わっていく様子を楽しむ。

ヴィンテージワインは、

ゆっくり感じていくワイン

なのかもしれません。


届いたヴィンテージワインは、すぐに開けない

ヴィンテージワインが届いたら、

すぐに開けて飲みたくなるかもしれません。

けれど、少し待ってください。

長い年月を経たワインは、とてもデリケートです。

配送による振動を受けています。

また、熟成した赤ワインには澱が生じていることもあります。

そのため、届いたワインはボトルを立て、

静かな場所で休ませることをおすすめします。


「どのくらい休ませればいいですか。」

これは、お客様からよくいただくご質問の一つです。

実は、konishi1924では「何日休ませてください」と一律にご案内することはありません。

プロの料理人の方や、ワインをよくご存じのお客様も多く、それぞれご自身の経験や考え方をお持ちだからです。

実際、お客様によって休ませる期間はさまざまです。

20年以上熟成したブルゴーニュをご購入いただいたお客様は、年明けのフレンチレストランへの持ち込みを予定されていて、11月初めにはワインをご購入されていました。

「一〜二か月前から立てて休ませておくんです。」

そう教えていただいたことがあります。

一方で、ワイン会で飲むためにお送りしたカリフォルニアワインを、届いたその日に開けられるお客様もいらっしゃいます。

どちらが正しいということではありません。

飲み頃の考え方と同じように、ここにも経験や好みがあるのだと思います。

私自身がお客様からご相談をいただいたときには、

20年ほど熟成したヴィンテージワインであれば、最低でも一週間、できれば二週間ほど休ませてから開けてみてはいかがでしょうか。

とお伝えしています。

輸送による振動で落ち着かなくなっていたワインが、ゆっくりと本来の表情を取り戻してくれることがあるからです。

もちろん、ワインによって状態は異なります。

絶対の正解はありません。

けれど、何十年もの時間を重ねてきたワインです。

届いてからも、ほんの少しだけ静かな時間を与えてあげることで、そのワインらしい味わいに出会える可能性が高くなると、私は感じています。

何十年もの時間を過ごしてきたワインです。届いてからも、あと少しだけ静かな時間を与えてあげる。そんな気持ちで待つことも、ヴィンテージワインを楽しむ時間の一部なのかもしれません。


古いワインの開け方

コルクの話です。

長い年月を経たワインのコルクは、若いワインのコルクとは状態が違います。

乾燥していたり、

柔らかくなっていたり、

途中で折れてしまうこともあります。

大切なのは、慌てないこと。

ゆっくりとコルクスクリューを入れ、

少しずつ力をかけながら抜いていきます。

もしコルクが折れてしまっても、

それだけでワインが飲めなくなるわけではありません。

コルクの一部がワインに入った場合には、茶漉しなどを使って取り除く方法もあります。

ここでは、宮島さんが以前お話しされていた古酒の開栓経験を入れると良いです。

「何十年ワインを扱っていても、古いコルクには緊張することがあります」

のような一文も、私は良いと思います。

専門家でも慎重に扱う。

だから初心者が怖く感じるのは自然。

でも対処法はある。

という流れです。


二枚刃式ワインオープナー

ヴィンテージワインを購入されたお客様から、こんなご質問をいただいたことがあります。

「ヴィンテージワインの上手なコルクの開け方はありますか?
開けるときにコルクが崩れてしまい、濾しながら飲みました。美味しくいただけたのですが、次回は失敗したくないので、良い方法があれば教えてください。」

これは、ヴィンテージワインでは決して珍しいことではありません。

長い年月を経たコルクは乾燥や劣化が進み、どうしても崩れやすくなります。

特に私が難しいと感じるのは、カリフォルニアやオーストラリアのヴィンテージワインです。

ヨーロッパ、とくにコルクの産地であるスペインやポルトガルでは、比較的手頃な価格のワインにも質の高いコルクが使われていることが少なくありません。

一方で、カリフォルニアやオーストラリアでは、上級ワインであってもコルクの品質がそれほど高くないことがあり、長期熟成後の抜栓には少し気を遣います。

そのため、私自身は通常のソムリエナイフと**二枚刃式ワインオープナー(ブロング式)**の二つを使い分けています。

また、ソムリエの友人の中には、古いワイン専用の**「ザ・デュランド(The Durand)」**を愛用している人もいます。

価格は3万円ほどしますが、ヴィンテージワインの抜栓では非常に評価の高いオープナーです。

一方、二枚刃式ワインオープナーは500円程度から購入でき、初めての方にもおすすめです。

コルクが崩れそうなときや、瓶の内側に張り付いてしまったコルクを抜くのに、とても役立ちます。

使い方は難しくありません。

まず、長い方の刃をコルクと瓶の間にそっと差し込みます。

続いて短い方の刃も差し込み、左右に少しずつ動かしながら、ゆっくりと奥まで入れていきます。

最後に、オープナーを軽く回しながら、ゆっくりと真上へ引き抜きます。

無理に力を入れず、「急がないこと」が一番のコツです。

コルクを抜いた後は、瓶口についた澱やコルクの細かな破片をナプキンで拭き取れば準備完了です。

もし途中でコルクが崩れてしまっても、あまり心配する必要はありません。

ワインをデキャンタに移したり、ペーパーフィルターで濾したりすれば、美味しく楽しめることがほとんどです。

ヴィンテージワインは、コルクが崩れることも含めて長い年月を過ごしてきた証です。

少し時間をかけて、ゆっくりと向き合うことも、古酒ならではの楽しみの一つだと思っています。


デキャンタージュは必要?

これも検索される内容です。

「古いワインはデキャンタに移した方がいいですか?」

よく聞かれる質問です。

答えは、

ワインによります。

若いワインでは、空気に触れさせるためにデキャンタージュすることがあります。

一方、長く熟成したワインは、急激に空気に触れることで香りが短時間で変化することもあります。

そのため、

「古いワインだから必ずデキャンタージュ」

ではありません。

澱を取り除くために静かにデキャンタへ移す場合もありますが、

私はまずグラスに少量注ぎ、

ワインの状態を見ることをおすすめします。

香り。

色。

一口飲んだ印象。

ワインの様子を見ながら判断する。

古いワインは、

ワインに合わせて飲み方を変える

くらいの気持ちで良いと思います。


最初の一口で判断しない

ヴィンテージワインを開けて、

「あれ?」

と思うことがあります。

香りが弱い。

少し変わった香りがする。

思っていた味と違う。

でも、そこで「美味しくない」と決めてしまうのは、少し早いかもしれません。

グラスに注いで10分。

20分。

30分。

時間とともに、香りが少しずつ変わることがあります。

反対に、開けた直後が最も美しく、その後急速に変化するワインもあります。

この予測できなさも、

ヴィンテージワインの面白さです。

最初の一口は、答えではありません。


分からなくても大丈夫

ヴィンテージワインを飲むと、

「香りが分からない。」

「熟成した味わいが理解できない。」

そんなふうに思うことがあるかもしれません。

けれど、私は無理に**「分かろう」とする必要はない**と思っています。

むしろ、大切なのは**「感じること」**ではないでしょうか。

例えば、美術館で絵画を鑑賞するとき。

「この絵はよく分からない」という人がいます。

もちろん、それも一つの感想です。

でも、絵を見ることが好きな人は、「分かろう」とするよりも、その絵の前に静かに立ち、描かれた時代や作者の気持ち、技法や背景に思いを巡らせながら、何かを感じ取ろうとします。

私も、そんな楽しみ方が好きです。

ヴィンテージワインも、少し似ているように思います。


1947年のバニュルス

以前、ワイン会で1947年のバニュルス(※)を皆さんにお出ししたことがありました。

1947年というと、終戦からわずか二年後につくられたワインです。

参加された皆さんは、

「香りがすごい。」

「甘さに深みがある。」

「こんなワインは初めて。」

それぞれに感じたことを話しながら、古いワインとの出会いを楽しんでいました。

その時、私はお店のデザインをお願いした設計士さんもお招きしていました。

修理の打ち合わせで来店された際、ワインの話になり、

「一度、古いワインを飲んでみたいですね。」

という会話になったことを覚えていたからです。

設計士さんのグラスにも1947年のバニュルスをお注ぎしました。

飲んでいる様子を見ていると、何かを感じてはいるものの、決して「美味しい」とは思っていないようでした。

何か伝えたいけれど、どう言葉にしてよいのか困っているようにも見えました。

普段はビールやウイスキーを楽しまれる方です。

甘口の熟成ワインは、きっと想像していた味とは大きく違っていたのでしょう。

そこで私は、

「1947年というと、まだ私たちは生まれていませんよね。終戦から二年しか経っていない頃のワインなんですよ。」

と話しかけました。

すると設計士さんは、ほっとした表情になり、

「うちの祖母が二十代の頃ですね。」

と言われました。

すると他の参加者からも、

「うちもそうですよ。」

「そんな時代のワインなんですね。」

と笑顔が広がりました。

その瞬間、ワインは「美味しいかどうか」だけではなく、

1947年という時代を、皆で想像しながら味わうものへと変わったように感じました。


フランス南部のルーション地方でつくられるヴァン・ドゥー・ナチュレルと言われる種類の甘口ワイン


ヴィンテージワインには、長い歴史があります。

だからこそ、

香りを言い当てられなくても、

味わいを細かく表現できなくても大丈夫です。

「どんな時代につくられたワインなのだろう。」

「誰がこのワインを造ったのだろう。」

そんなことに思いを巡らせながら、一杯のワインを楽しむ。

それもまた、ヴィンテージワインならではの魅力なのだと思います。


初めての一本から、ヴィンテージワインは始まる

初めてヴィンテージワインを開ける時は、

少し緊張するかもしれません。

コルクは抜けるだろうか。

美味しいだろうか。

自分に味が分かるだろうか。

けれど、

一度飲んでみると、

「古いワイン」という言葉から想像していた世界とは少し違うことに気づくかもしれません。

若いワインにはない香り。

静かな味わい。

グラスの中で変わっていく時間。

もちろん、

すべてのヴィンテージワインが好みに合うわけではありません。

それでも、

「こんなワインもあるのか」

と思えたなら、

そこからヴィンテージワインの楽しみは始まります。

難しく考えなくても大丈夫。

まずは、

今、美味しく飲める一本から。

konishi1924では、

初めてヴィンテージワインを飲む方にも、

その方の好みや楽しむ場面に合わせてワインをご紹介しています。


あとがき

私も若い頃は、ヴィンテージワインは難しいものだと思っていました。

たくさん失敗もし、思うように香りが開かないワインにも出会いました。

それでも、一杯のワインから教えられたことは数え切れません。

このブログが、初めてヴィンテージワインを楽しむ方の不安を少しでも和らげ、「一本飲んでみようかな」と思っていただけるきっかけになれば嬉しく思います。


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