
冬の夜にひとりで飲みたいワイン
冬のよる、
誰とも話さずに過ごしたい日があります。
音楽もつけず、スマートフォンからも少し距離を置いて、
ただグラスをひとつ、テーブルに置く。
そんな時間に、なぜか手が伸びるワインがあります。
冬のよるにひとりで飲むと、
妙にしっくりくるワイン。
クリスチャン・ビネール
G マセラシオン ヴァン・ド・フランス
ヴィニフィエ・パー・ジュンコ 2023
フランス・アルザス地方でつくられたオレンジワインです。
クリスチャン・ビネール × 新井順子のゲヴェルツトラミネール
このワインは、
クリスチャン・ビネール氏と新井順子女史によるコラボレーションから生まれました。
この取り組みが始まったのは2020年。
新樽熟成を好まないクリスチャン・ビネールに対し、新井順子は自身の醸造フィロソフィーとして
「彼の葡萄を、新樽で発酵させてみたい」と考えます。
500Lの新樽、たった1樽だけ。
極めて小さな挑戦でした。
完成したワインを口にしたクリスチャンは、
「なかなか良いね!」
そう言ってこの試みを受け入れ、同じコンセプトは2022年へと引き継がれました。
そして2023年。
2種類・2樽が仕込まれ、
そのうち先にリリースされたのが、このゲヴェルツトラミネールのマセラシオンです。
2023年収穫のゲヴェルツトラミネールを使用し、
5日間のマセラシオンの後、500Lの樽で発酵。
SO₂無添加で仕上げられた、辛口スタイルのオレンジワインです。

テイスティングしてみました。
グラスに注ぐと、
アプリコットジャムや黄桃のコンポート、
マンゴーを思わせるトロピカルフルーツの香り。
黄色い花――たとえば金木犀――
さらにオレンジピールやダージリンの葉のニュアンスが重なり、
複雑で華やかな香りが立ち上がります。
華やかですが、どこか落ち着きがあります。
冬の空気に、すっと溶け込むような香りです。
口に含むと、
香りで感じた要素がそのまま、静かに広がっていきます。
味わいには厚みがありながらも、
酸味はあくまで柔らかく、
ほのかなタンニンが全体を引き締めています。
余韻は長く、穏やかに続き、
飲み込んだあとも、しばらくワインの気配が残ります。
一口ごとに印象が少しずつ変わり、
飲み手の状態によって表情を変えるような、不思議な奥行き。
それは、冬の夜を言葉少なに過ごす時間と、どこかよく似ています。
このワインは、
感想を言い合いながら飲むよりも、
ひとりで、静かに向き合うほうがしっくりくる。
料理がなくても構わない
30分ほど経つと、香りは丸く、輪郭は深くなる。
急がない夜ほど、このワインはよく応えてくれます。
冷やしすぎず、指先に冷たさを感じる程度で。
温度が上がるにつれ、果実と紅茶の気配がほどけていく。
冬の夜には、その変化を待つ時間も心地いい。
誰かに気を遣う余裕がなく、今日はもう、静かに終わらせたいと思った夜。
そんな夜に、そっと開けてほしい一本です。
