オレンジワイン
オレンジワインを飲んだことがありますか。
飲んだことがある方は、フルーツのオレンジの香りをつけたフレーバーワインでないことはお分かりかと思います。
オレンジワインは、白ブドウを材料に、赤ワインと同じ製法で造られたワインのことです。
白ブドウを果皮や種と醸造することによって、果皮の香りや色が抽出され、鮮やかなオレンジがかった色合いのワインになります。
オレンジワイン、ジョージアワイン、アンバーワイン、クヴェヴリ・・・などなど、一緒に語られることの多い言葉です。
実は、「オレンジワイン」という呼び名はイギリスのワイン商が2000年代に作った造語で、オレンジワインの伝統的な産地であるジョージア(グルジア)はアンバーワインという名称を使用しています。
「オレンジワインとロゼワインはどこが違うの?」よく聞かれる質問です。
これらを踏まえ、整理しながらオレンジワインの魅力をお伝えしていきます。
オレンジワインと醸造
オレンジワインは、「白ブドウをつぶして果皮と種を漬けこんで発酵したオレンジ色のワイン」とも
「白ブドウやグリ・ブドウ (果皮がピンク色のブドウ) をつぶし、果皮と種を漬けこんで発酵した、オレンジ色のワインの総称」とも言われます。
“グリ・ブドウ” は聞きなれない方もいらっしゃるでしょう、日本でいうと「甲州」があてはまります。
オレンジワインは、おおまかにいうと「白ブドウで赤ワインのつくり方をしたワイン」のことなのです。
白ブドウの果皮中にアントシアニンが含まれていないので、赤色にはなりません。代わりに黄色系色素が溶出することで、オレンジに近い色調になります。
一方、黒ブドウから白ワインをつくるとロゼワインが出来上がりますから対照的ともいえますね。
オレンジワインとロゼワインは、用いられるぶどうとつくり方に大きな違いがあることお分かりいただけたでしょうか。
クヴェヴリ
オレンジワインの起源は、約8000年前にさかのぼります。ヨーロッパとアジアの境に位置する国、ジョージアが発祥。
現在は様々な国でつくられてるオレンジワインですが、ジョージアの人たちにとっては、長い歴史を経て生活に溶け込んだ馴染み深いワイン、いまだに自家消費用につくられることも多いといいます。
ジョージアでは、現在も多くの生産者が「クヴェヴリ」と呼ばれる卵型をした大きな「かめ」で発酵・貯蔵します。
特有なのは、クヴェヴリを地中に埋めて醸造するすること。
地中に埋めることで、安定した温度でアルコール発酵が行われ、地温の変化に従ったマロラクティック発がゆっくりと進んでいきます。
ワインの色合いが濃いものが多く、アンバーワインと呼ばれています。
このクヴェヴリを使用したワイン製法は、2013年にユネスコの無形文化遺産に指定されました。
オレンジワインの今とむかし
むかし
ワイン造りは、紀元6000年ごろ、ジョージアのコーカサス山脈から黒海にかけての地域で始まったと云われています。
この頃、ワインづくりの用いられていたのは伝統的な粘土製の素焼きの壺、後の「クヴェリエ」です。
これらのことからオレンジワインの起源は、ワイン発祥の地と言われるジョージアであると考えられます。
紀元前2000年代にジョージアで大きな地震がありました、地上の立てて使われていた素焼きの壺は破壊され、それ以降地中に埋められるようになったようです。
また、ジョージアは、337年にキリスト教と国教として認めた世界でも最初の国のひとつ。キリスト教と密接な関係にあるこの国では沢山のワインが修道院でつくられるようになりました。
10世紀から13世紀はジョージアの栽培と醸造の黄金期とされます。
近年から現在
時は流れ、ジョージアが旧ソ連の支配下にあった時代、ゴルバチョフが1985年~87年にかけて実施したペレストロイカの禁止法により大幅に生産量が減りました。これは、1991年に旧ソ連から独立するまで続きます。
独立をきっかけにワイン生産は再興されますが、2006年最大の輸出先だったロシアが政治的な理由で禁輸措置をとり全輸出量の90%を失う結果になりました。
2013年、禁輸は解除、クヴェリエを使ったワイン造りがユネスコの世界遺産に登録され、これをきっかけにワインは少しづつ広い市場に向けて輸出されるようになります。
復活と広がり
オレンジワインを現代に復活させたと云われるのが、イタリア・フリウリ州の生産者ヨスコ・グラヴナーです。
秀逸な白ワインをつくるとして高く評価され、自然なワインづくりをすることでも知られます。
そんなグラヴナーが理想のワインを造るため様々な発酵方法を試していたところ、ジョージアで伝統的に造られているアンバーワインに感銘を受け、1998年に初のオレンジワインを造りました。
このオレンジワインは、ジャーナリストから高い評価を受け注目されるようになります。これを受け、イタリアの自然派ワイン生産者たちに広まって行きました。
果皮や種を取り除いて実を破砕する白ワインには、赤ワインのように酸化防止剤の役割を担うタンニンがほとんど含まれていません。そのため品質を守るために酸化防止剤(亜硫酸)を多く取り入れる必要がありました。
しかしオレンジワインの製法なら果皮に含まれるタンニンが果汁に含まれるため、亜硫酸の添加を抑えたままでワイン造りが可能です。
こういったナチュラルなワインのつくり方は、自然派の生産者たちを刺激し受け入れられ、さらに多くの人に評価されオレンジワインの再興が始まり躍進しています。
近年、ジョージアワインが流通し始めたこともあり、オレンジワインはさらに注目されています。
ヨーロッパの国々はもちろん、オーストラリアやカリフォルニア、日本でも造られるようになりました。
オレンジワインとぶどう品種
ジョージアの伝統的な品種
「ルカツィテリ」、ジョージアでもっとも広く栽培されている葡萄、ジョージア語で「赤い茎」という意味。 果肉が厚く、芽吹きが遅く寒さに強いのが特徴で、コーカサス地方の厳しい冬にも耐える事ができます。
酸味が高く、それでいて香りは控えめなので、アロマティックなムツヴァネ・カフリとブレンドすることも多いようです。
クヴェリエを用いた伝統式醸造スタイルでは、アプリコットやオレンジ、柿や枇杷の香りを主体に、ほど良いタンニン分が感じられる主張のある味わいになります。
「ムツヴァネ・カフリィ」、ジョージア語「緑のカヘティ」という意味。 カヘティ地方で昔から育てられてきた、非常に古い土着品種です。
果肉が薄く、タンニンは控えめ、さわやかな酸味に特徴があります。 アロマティックな品種で白桃やトロピカルフルーツ、果樹の花の香りがします。
華やかな香りと複雑性をワインに与え、ルカツティリやキシとブレンドされる事があります。
グリ系の品種
ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミネーるなど、日本の「甲州」もこの系列です。
オレンジワインの醸造には、上記のムツヴァネ・カフリィ、ゲヴェルツトラミネールやピノ・グリなど香りの成分が芳香性の高い品種が多く使用されています。
オレンジワインの醸し発酵を行う工程は、果皮に含まれるブドウの香り成分を多く抽出することが可能で、品種の特徴を生かした香りのよいワインが出来上がるのです。
酸味のある品種
ルカツィテリなどの酸味が強い品種も多くみかけ、リースリングからつくられるオレンジワインも少なくありません。
オレンジワインは茎ごと醸し発酵を行うことにより、茎に含まれるカリウムと酸が結合し、出来上がるワインの酸味が落ちてしまうため。もともと酸の豊富な品種を使うことにより補っているのです。
最後に
オレンジワインの味わいは、白ワインと赤ワイン両方の魅力を楽しめる要素があります。
使用するブドウの個性を反映した、濃厚な果実味と複雑さを備えた香り高い白ワインの要素、果皮由来の渋味とコクもしっかりと感じられ赤ワインの要素です。
これらの要素は様々なお料理とのペアリングを可能にするようです。
お肉やお魚はもちろん、独特な厚みのある味わいは、ワインと相性があまり良くない料理されるスパイスや香辛料を使ったお良とのペアリングも可能です。
この当たりもオレンジワインが人気の秘密なのかもしれません。